初夏、風にそよぐ紫の花と、ふっと気持ちを軽くする清々しい香り。
ラベンダーは、眺めても香っても「癒し」を与えてくれる特別なハーブです。北海道・富良野のラベンダー畑が観光名所になっているのも、その圧倒的な美しさゆえです。

しかもラベンダーは、正しいポイントさえ押さえれば非常に育てやすい植物。
ここでは、特徴・品種ごとの違い・剪定・水やり・夏越し冬越しのコツをで紹介します。
ラベンダーはこんな植物
基本情報
- 科 属: シソ科ラベンダー属
- 開花期: 4月〜7月
- 原産地: 地中海沿岸
- 学 名: Lavandula
- 和 名: 薫衣草(クンイソウ)
ラベンダーの名前はラテン語のラヴァンド(洗う)に由来しています。ラベンダーの抗菌作用などから、入浴の際に使われたことからきていると言われています。
ラベンダーは小さな低木ですが、ガーデニングでは多年草的に扱われ、まっすぐ伸びた花茎の先に可憐な花穂をつけます。葉や茎にも香りがあり、ハーブとしての用途も豊富です。

花言葉
- あなたを待っています
- 期待
- 沈黙
- 清潔
「あなたを待っています」は、内気な少女が恋をしたものの思いを告げられず待ち続けていたら一輪の花になったという逸話からきていると言われています。
「沈黙」はラベンダーの香りが精神を落ち着かせる作用があることに由来。「清潔」はラベンダーには抗菌、殺菌作用があることに由来していると言われています。
ラベンダーの特徴
清々しい香りは“天然のリラックス剤”
ラベンダーの香りは“ハーブの女王”と呼ばれるほど格別です。
精油はリラックスや安眠、抗菌効果などが期待され、アロマでも最も定番の香りです。
枝が木質化しやすく、年数とともに樹形が乱れやすい
ラベンダーは多年草というより“小低木”に近い性質をもちます。年数が経つと株元が木質化して枝が広がり、花付きが悪くなることも。
後述の剪定を年に一度しっかり行うことで、株の若返りができます。
高温多湿は苦手。風通しの良さが育成のカギ
地中海沿岸の乾燥した気候が原産のため、湿気が苦手です。
梅雨のない北海道でよく育つのはこのためです。「乾き気味に育てる」 がラベンダー管理の最重要ポイントです。
品種により香り・耐寒性・花の形が大きく違う
「暑さに強い」「寒さに強い」「四季咲き」「香りが強い」「観賞性が高い」など、ラベンダーは品種ごとに個性がはっきりしています。
自分の地域の気候に合う品種を選ぶだけで、生育難易度は驚くほど下がります。
切り花・ハーブとしての利用価値が高い
ラベンダーは観賞だけではなく、精油・ポプリ・サシェなどのクラフト利用、防虫・リラックス効果などの“生活に役立つ植物”としても優秀です。
育てて終わりではなく「使って楽しめる」点も大きな魅力です。
ラベンダーの種類
アングスティフォリア
別名はイングリッシュラベンダー。耐寒性は強いですが、高温多湿に弱いのが特徴です。富良野で多く栽培されている代表的な品種です。香りの質が高く、精油用としても人気です。

ラパンディン
暑さに強いのが特徴です。非常に強健なので、温暖な気候でも育てられます。品種としてはグロッソが有名です。育てやすいため初心者におすすめの品種です。花穂も長く見応えがあります。

ストエカス
花期が長いのが特徴です。フレンチラベンダーと呼ばれる品種もこの系統です。他のラベンダーに比べると香りは弱いですが、ウサギの耳のような”花の冠”が愛おしい品種です。

デンタータ
葉にギザギザと切れ込みがあるのが特徴で、四季咲きのラベンダーです。他の品種に比べると香りは弱いですが、温暖な地域では秋や冬も花を咲かせることがあります。

プテラストエカス
四季咲きのラベンダーですが、耐寒性が弱いのが特徴です。レースラベンダーとも呼ばれています。美しい葉姿が人気ですが、寒さに弱いのでガーデニング中・上級者向けの品種です。

ラベンダーの育て方
植えつけ
ラベンダーは過湿が苦手です。水はけの良い土に植えつけます。市販の培養土に腐葉土や赤玉土を混ぜると水はけがよくなります。
また、株元の風通しを良くすることで過湿の防止になります。浅めに植えつけると株元が蒸れにくくなります。
水やり
ラベンダーは過湿と蒸れが天敵です。水やりは土が乾いたらたっぷりとが大原則です。水を与えすぎると、過湿で蒸れて株が弱ります。水のやり過ぎには注意しましょう。
肥料
ラベンダーは荒れた土地でも育つので、肥料は控えめにします。真夏と真冬以外の生育期に緩効性肥料を与えれば十分です。
剪定・切り戻し
ラベンダーは生育が旺盛のため、放っておくと枝がどんどん混み合います。蒸れに弱いので、定期的に剪定をして風通しを改善する必要があります。
特に梅雨前は思い切って1/3〜1/2程度、剪定(切り戻し)をします。また、花が終わった頃に軽い剪定で形を整えます。
剪定をすることで株が若返り、花付きが良くなります。
夏越し
ラベンダーは高温多湿が苦手です。真夏は半日陰で風通しの良い場所で育てるのが望ましいです。
地植えの場合は梅雨前に忘れずに剪定をして株の負担を軽くして夏を越しましょう。
冬越し
ラベンダーはある程度の耐寒性はあります。ただ、強い霜にあたると弱りますし、雪に埋もれると雪の重さで枝が折れる場合もあります。
鉢植えの場合は、寒さが厳しい日は軒下に避難するなど寒さ対策をします。
地植えの場合はウッドチップや腐葉土などでマルチングしてあげるだけでも効果があります。
収穫
ラベンダーは初夏に開花します。収穫は晴れた日の朝にします。収穫したラベンダーはドライフラワーやポプリにして気軽に楽しむことができます。



ラベンダーの増やし方
ラベンダーは挿し芽で簡単に増やすことができます。
挿し芽を鹿沼土や赤玉土に挿して、明るい日陰で水切れしないように水を与えるだけです。1か月くらい経てば発根するので、土に植え付けます。
よくあるQ&A集
Q1. ラベンダーがすぐ枯れてしまいます。原因は何ですか?
A. 一番多いのは“加湿”です。
ラベンダーは乾燥した環境を好み、根が常に湿っていると一気に弱ります。
- 風通しの悪い場所
- 水はけの悪い土
- 鉢皿の水がためっぱなし
などは枯れる鉄板パターン。水は『土がしっかり乾いてから』少量与える、土は砂質で排水性の高いブレンドにすることで改善します。
Q2. ラベンダーの香りが弱いのですが、どうしたら強くできますか?
A. 強香のコツは“日当たりとストレス”。
ラベンダーは、日光をたっぷり浴びるほど香り成分が増します。
また、“やや乾燥気味の環境”の方が香りが強くなる習性あり。
- 半日陰 → 香りが弱い
- 日向+乾燥気味 → 香りが濃い
香りを最大化するなら、日照6時間以上を確保しましょう。
Q3. せっかく咲いた花穂がすぐ黒くなってしまいます。病気ですか?
A. 多くは“湿気+風通し不足”からくるカビ性のトラブルです。
梅雨時期は特に花穂が蒸れて黒変しやすくなります。
対策は以下の通り:
- 花が咲き終わる前に早めに刈り取る(蒸れ防止)
- 株の中心に空気が通るように枝透かし剪定
- 多湿期は雨の直撃を避ける(鉢なら軒下へ)
特にイングリッシュラベンダーは湿気に弱いので注意が必要です。
Q4. 冬越しがうまくいきません。寒さには強いのでは?
A. 種類によって耐寒性がかなり違います。
一般に「ラベンダー=寒さに強い」と思われがちですが、品種ごとに耐寒性は大きく違います。
- イングリッシュラベンダー → 強い(庭植えOK)
- フレンチ系・ストエカス → 寒さに弱い(霜除け必須)
寒冷地で育てるなら、イングリッシュラベンダーが望ましいです。寒さに弱い品種は、冬は鉢ごと室内の明るい窓辺へ移動しましょう。
Q5. 株姿が乱れて“木質化”し、花付きが悪くなりました。直せますか?
A. ある程度は“早めの刈り込み”で改善できます。
ラベンダーは年数が経つと茎が茶色く木のようになり、そこから新芽が出にくくなります。
改善策:
- 花後(6〜7月)に全体の半分ほど刈り込む
- 秋に軽く整える
- 木質化部分まで切り込むと枯れ込みやすいので注意
若返りを狙うなら、木質化する前から毎年刈り込むことが大切です。
まとめ
ラベンダーは「香り・美しさ・育てやすさ」の三拍子がそろった植物です。
高温多湿にさえ気をつければ、毎年初夏に美しい花を咲かせ、香りで生活を豊かにしてくれます。
ぜひ、自分だけの“ミニ富良野”を庭やベランダに作ってみてください。



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